2023.03.07

[Po-uta 発売] Porter Robinson スペシャルインタビュー

Q1: 今回自分の歌声が「Po-uta」としてボイスバンクになった感想を教えてください。また、実際にデモソングの制作で「Po-uta」を使用した感想を教えてください。

アルバム『Nurture』で使った、ピッチを上げた声をボーカロイドにする機会は、僕にとって夢でした。昔、DECO*27、KZ/Livetune、Sasakure.UK、buzzGを車で聴きながらドライブしていたのですが、彼らのサウンドは僕にとても大きな影響を与えました。そして、邦楽のコード進行、メランコリックなサウンド、メロディックな感性が好きになりました。深瀬さん(SEKAI NO OWARIのFUKASE)の声がボーカロイドに再現されたのも、すごくカッコイイと思ったので、同じことができてすごく光栄です。

ボイスバンクを使うことで、音節に対して非常に理論的に考察するなど、今までとは違う形態で取り組まなければならなかったのがとても刺激的でした。普段、音楽を作るときは、まずオートチューンでデタラメな英語を歌い、後からちゃんとした言葉にしていきます。ボーカロイドを使うことで、言葉の意味とメロディーを並行して形成したくなりました。

Q2: デモソングに込めた想いを教えてください。

皆さんにAIの未来についてよりよく考えてほしいし、今後AIの時代に生じるであろう混乱や倫理的ジレンマに、少しばかり悲しみを感じてほしいと思っています。(このデモソングは)僕ポーターを父親のように慕っている人工脳を持ったPo-UTAの話です。僕は不死身ではなく、Po-UTAは不死身。そのため、僕たちは永遠の別れを迎え、その結果Po-UTAは悲しみを受け入れなければならなくなります。つまり、これは親を亡くした子供の物語です。もちろん、人間の感情や目を通して描写されるAIなので、リアリティがあるかどうかはわかりませんが、これはアートなので、やはり人間の心に響くように作りました。

Q3: 今回「Po-uta」を作ろうと思ったきっかけ教えてください。

僕はボーカロイドとその音楽がとても好きなんです。この機会は僕にとってとてもクールなものだと思いました。こういった機会は、僕にとって何かに表彰されるのと同等の価値があります。僕にたくさんの感動を与えてくれたボーカロイドの世界に関われることで、僕も誰かに感動を与えることができればと思います。

Q4: VOCALOIDとの出会い、きっかけとなるエピソードを教えてください。

日本やオタク文化に興味を持つ多くの人々と同じように、僕もずいぶん前に初音ミクを知りました。2014年のアルバム『Worlds』を書いていたとき、(初音ミクを初めて知った時と)同じような感情--デジタルな声に付随する異質な親しみ、かわいらしさ、不思議な感情、架空の世界で作る思い出をアルバムに反映させたいと考えていました。その後すぐに「Avanna」という英語版ボーカロイドを見つけ、「Sad Machine」「Fresh Static Snow」「Goodbye to a World」の3曲に使用しました。それ以来、「Avanna」は英語版ボーカロイドの世界では定番のキャラクターみたいな感じになっていますね。そんなキャラクターが、僕のアルバムの一部を担ってくれて嬉しいです。

Q5: VOCALOIDの好きなところを教えてください。

ボーカルは、歌のメロディーと意味合いの両方を伝える、音楽で最も力強い要素です。なんともパワフルな組み合わせです。そして、人間の声のバリエーションは非常に興味深いものです--僕が初めてエレクトロニック・ミュージックに触れたのはDaft Punkでしたが、彼らはボコーダーやトークボックス(トーキング・モジュレーター)、その他さまざまなボイスチェンジャー技術を駆使していました。ボーカロイドは、これら技術の次なるステップとして、自然に現れましたが、非常にパワフルな存在です--それは、単なる作曲ツールではなく、良い意味で少し人工的なサウンドを奏でる。その奇抜さが魅惑的なのです。

Q6: 今後の制作にもVOCALOID、「Po-uta」を使用する予定はありますか?

Po-utaは、アルバム『Nurture』で多用したピッチアップとフォルマントシフトされたボーカルエフェクトを使っているので、アルバムのサウンドととても強い親和性を感じます。だから、ある意味、Po-utaはそのサウンドを永遠のものにし、僕にとっては集大成のような感じです。でも、正直なところ、スタジオではあまり計画を立てられないんです。創造性は計画性を全く重んじないものだと思います。頭で考えて計画を立てるよりも、遊び心と、心の赴くまま、直感で理屈抜きに探求しているときに、最高の作品ができるんです。つまり、何が起こるか誰も予測できないということです。

Q7: 「Po-uta」をこんな人に使ってほしい、「Po-uta」を使用してこんな事をしてほしい、という想いがあれば教えてください。

ボーカロイドのクリエイターやソングライターが、Po-utaのユニークなボイスを気に入ってくれて、彼の特徴を追求し、彼にオリジナルの楽曲を与えてくれることを、心から願っています!

Q8: 今後のVOCALOIDに期待することを教えてください。

ボーカロイドは、時間が経つにつれて、より柔軟でリアルなものになっていくと思います。AIがメロディーを提案したり、イントネーションを提案したり、ピッチスクープをしたり、歌詞を提案したりすることも、将来的にはあり得ることだと思います。目の前のツールを使いこなすアーティストの精神を、人々が持てるようになることを僕は願っています。どのようなツールであっても、心にあるアイディアを表現し、形にできるよう、人々が探究できればと思います。

Q9: ファンの皆様へ一言お願いします。

僕の音楽に関心を持ってくれてありがとう。心から感謝しています。この世界に生きる時間を大切にしていきましょう。