2024.11.27

VX Betaの概要と基本的な使用方法

VX Betaは、DAW用の試作プラグイン(バーチャル・インストゥルメント)です。ユーザーサポートの提供はございません。

ソフトウェア本体は無料でダウンロードでき、VOCALOID6 Editorのライセンスをお持ちであればVX Betaを使用することができます。

この記事では、VOCALOID6ユーザー向けに、VX Betaの概要と基本的な使用方法及び注意点をお伝えします。

VX Betaはプラグインなので、使用するためにはVST3形式(MacではAU/AAX形式にも対応)に対応したDAWソフトウェアが必要です。以下はVST3形式に対応したWindows版 Steinberg Cubase Proを用いて説明しています。VOCALOID6 Editorに付属するCubase AIでも同様に使用することができます。

VX Betaのインストール方法は以下の記事を御覧ください。

目次

1.VX Betaの概要
2.使用前の注意点
3.基本的な使用方法
3-1.ボイスバンクの選択
3-2.メインコントローラーの操作と歌詞の入力
3-3.パラメーターのオートメーション
3-4.ピッチの編集
4.他のDAWで使用する方法(シーケンスデータの読み込み)
5.その他

1.VX Betaの概要

VX BetaはVOCALOID:AIの技術を使用したバーチャルインストゥルメントプラグインです。対応したDAWにおいて、ピアノやギター等のバーチャルインストゥルメント同様に、合成音声による歌声を出力する音源として使用することができます。

特にCubaseで使用する場合は、VOCALOID6 Editorを使用せずに、Cubaseのキーエディター(ピアノロール画面)からノートと歌詞の編集を行うことができます。

また、パラメーターのコントロールにおいては、ノブやスライダーを配したメインコントローラーを使用します。プラグインエフェクトのように再生しながら音を調整することができます。

VOCALOID6 Editorと異なり、歌声の合成はリアルタイムで行われるため、素早くボーカルトラックを制作することができます。

普段の制作でCubaseを使用しており、歌唱に関する細かな編集や調整を必要としない場合は、VOCALOID6 EditorよりもスピーディーにVOCALOID:AIによる歌唱音源を制作することができます。仮歌などの用途には最適です。

2.使用前の注意点

VX Betaを使用したデータは、CubaseまたはVX Betaを使用しているDAWのプロジェクトファイルとして保存され、VOCALOID6 Editorで読み込むことはできません。VOCALOID6 Editorでの制作を予定している場合は、VX Betaを使用せずにVOCALOID6 Editorを使用してください。

Cubase以外のDAWではピアノロール画面でノートと歌詞の入力ができません。Cubase以外のDAWで使用する場合は、予めVOCALOID6 Editorまたは他のソフトウェアで制作したノート・歌詞情報を持つシーケンスファイルを用意し、読み込む必要があります。本記事後半の「Cubase以外のDAWで使用する方法」をご参照ください。

3.基本的な使用方法

VX Betaはバーチャルインストゥルメントとして使用します。MIDIトラック(インストゥルメントトラック)等において、音源としてVX Betaを起動しましょう。

3-1.ボイスバンクの選択

[Voice Bank]の項目で、使用するボイスバンクを選ぶことができます。

VOCALOID6で使用できるVOCALOID:AIボイスバンクに対応しています。

3-2.メインコントローラーの操作と歌詞の入力

起動すると、プラグインウインドウ内にはメインコントローラーとピッチエディターが表示されています。

ピッチの編集をしない場合、ピッチエディターを閉じることができます。プラグインウインドウ右下のチェックボックスで[Visual]のチェックを外すことで、メインコントローラーのみ表示されます。

ノートの入力は、Cubaseのキーエディターで行います。VOCALOID6 Editorのように専用のソフトウェアを使用せずに入力することができます。

歌詞もCubaseのキーエディターのテキスト欄から入力します。1文字ずつ入力することもできますが、複数のノートの歌詞をまとめて入力することも可能です。

文節の最初のノートを選択し、テキスト欄に歌詞を入力してください。

歌詞を入力したら再生してみましょう。再生しながらメインコントローラーのパラメーターを操作することで、音を変化させることができます。

パラメーター名読み方効果
Airエア歌声の息成分
Formantフォルマントフォルマント(声の音色)
Attackアタック発音の立ち上がりのはっきり度合い
Vibratoビブラートビブラートの強弱
Powerパワー音量や音色も含めたダイナミクス(強弱感)
Timingタイミング発声のタイミング
Pitchピッチピッチシフト量
Fuzzyファジーピッチにランダムなゆらぎを与える
Presenceプレゼンス声の強弱にかかわらずミックスの中で声が存在感を持つように音量変化と音色を加える
Keroケロピッチカーブを機械的にする
Tuningチューニング歌声の基礎ピッチ
Outputアウトプット出力されるゲイン

ご注意
・VX Betaでは再生の度に異なる合成音が出力されます。
・VOCALOID6 Editorでは日本語・英語・中国語の入力が可能ですが、VX Betaでは日本語及び英語の入力のみ対応しています。

3-3.パラメーターのオートメーション

VX Betaのパラメーターは、一般的なプラグインエフェクト同様に、Cubaseのオートメーション機能を用いることで、曲にあわせて動かすことができます。

Cubaseにおいてトラックのオートメーションを表示し、[詳細設定]から[VX Beta]を開き、任意のパラメーターを追加します。

オートメーションレーンで指定したパラメーターの動きを書き込むことで、VX Betaのパラメーターが指示に沿って変化します。画像では[Power]パラメーターが選択されているため、Powerノブがオートメーションレーンに従って自動で動きます。

3-4.ピッチの編集

ピッチエディターを使用することで、合成される音のピッチカーブを自在に編集することができます。ピッチ編集を行う場合は、右下のチェックボックスで[Visual]がチェックされた状態で、左上のチェックボックスで[Pitch Editor]のチェックを入れます。

[Main Controller]をチェックしてメインコントローラーを非表示として、作業領域を広くするとピッチ編集がしやすくなります。

ピッチエディターでは「ペン」と「消しゴム」の2つのツールを用いて編集を行います。

VX Betaでは再生ごとに歌声合成を行うため、Cubaseのキーエディターでノートを入力しただけでは、VX Betaのピッチエディターには何も表示されません。一度再生することでピッチカーブが表示されるようになります。

最初に合成されたピッチカーブを参考に、修正が必要な箇所をペンツールで上書きしていきましょう。例えば、ビブラートが不要な場合はペンツールで直線を上書きします。

すると、次の再生においてペンツールで指定したピッチカーブに近い歌声が合成されます。

ペンツールで指示したピッチカーブは、消しゴムツールで削除するまで消えず、維持されます。不要なピッチカーブは消しゴムツールで削除しましょう。

なお、VX Betaのピッチエディターでのピッチ編集については、右クリックメニューの[元に戻す]を用いてアンドゥ操作を行うことができます。

ご注意
・VX Betaのピッチエディターに対して[Ctrl/⌘+z]などショートカットキーでのアンドゥ操作はできません。VX Betaを使用中(VX Betaが有効なフォアグラウンドの状態)においても、ショートカットキーによるアンドゥ操作を行った場合は、Cubase側に作用します。誤って操作しないようご注意ください。
・VX Betaのピッチカーブは、Cubase側のデータからは独立したパラメーターです。VX Betaのピッチカーブを編集してもCubase上のMIDIデータ(ピッチベンド、コントロールチェンジ等)は変化しません。
・Cubase側のMIDI情報を受信して合成・発音を行うため、合成結果はCubase側のピッチベンド・コントロールチェンジ等MIDIデータの影響を受けます。

4.他のDAWで使用する方法(シーケンスデータの読み込み)

他のDAWで使用する場合も、DAW内の任意のトラックにおいて、バーチャル・インストゥルメントとして起動します。

メインコントローラーの各パラメーターは使用できますが、ノートと歌詞の編集はCubaseの様にピアノロール上ではできませんので、以下の形式に対応したシーケンスファイルをVOCALOID6 Editor等他のソフトウェアで用意してください。

読み込み可能なシーケンスファイル形式
.vpr, .vsqx, .ccs, .svp, .mxl, .musicxml, .ust, .ppsf, .mid, .midi, .vxf

シーケンスファイルを読み込む場合は、[Sequence File]ボタンからファイルを指定して読み込んでください。

データに複数トラックが含まれる場合は、読み込むトラックを[Loading Track]で指定します。指定後は[リロード(円の矢印)]ボタンを押して読み込みを行ってください。

シーケンスファイルから読み込んだ歌詞を編集する場合は、VX Betaの歌詞エディターを使用します。左上のチェックボックスから [Lyrics Editor]にチェックを入れ、歌詞エディターを表示してください。

シーケンスファイルに含まれる歌詞が表示されるため、必要な箇所を編集してください。発音記号などは、マニュアルを参照してください。

5.その他

試作プラグインであるため、動作が不安定な場合があります。
各チェックボックスが表示されない場合は、VX Betaのウインドウを閉じ、改めて開くことで改善される場合がありますので、お試しください。